「じゃぁ国に言えばよかったじゃん! 知ってたんでしょ!? 知ってたのに、なんで言わないの!!」


彩美がまた自分の頭をかきむしり、叫んだ。


「彩美……」


彩美だって体内にチップを埋め込まれている。


<mother>にとって不利になる事をしようとすれば、どうなるのか、もう理解しているはずだ。


それなのに、これほどまで取り乱している。


「彩美、あたしたちは<mother>で使われているゲームのコマなんだよ? なにもできないに決まってるでしょ?」


そう言うと、彩美が顔を上げてあたしを見た。


その目は鋭く吊り上がっている。


「さすがは経験者だよね。切り替えが早くて羨ましいよ」


彩美はトゲのある口調でそう言い、あたしから視線を外したのだった。