「眠る? こんな状況で眠れるわけないじゃん!」


声を荒げてそう言う。


「そうかもしれないけど、今の彩美は次のバトルで呼ばれたら負けちゃうかもしれないよ? そのためにも少し休んで……」


「うるさいな!!」


あたしの言葉を途中で遮り、自分の頭をガリガリとかきむしる。


「彩美、少し落ち着いて」


「朱里はなんでそんなに落ち着いてるの!?」


「あたしは、奴隷部屋から脱出したから」


そう言うと、彩美はグッと下唇を噛みしめた。


「……こういうこと、経験したんだっけ?」


「そうだよ。目の前で何人も死んでいった」


「じゃぁさ……なんでそれ、言わなかったの?」


「え?」


あたしは驚いて彩美を見た。


彩美は表情を歪めて涙をボロボロとこぼしている。


「警察に言えばよかったじゃん……」


「それは……警察は、<mother>側の人間だったから……」


奴隷部屋のコロッセオに警察官がいたことを思い出してそう言った。


彩美は驚いたように目を見開き、そしてまた泣き顔になった。