「なに、言ってんだよ、だってあいつは朱里を置いて転校して……」


「違うから!! 翔吾はあたしを守るために自分から死んでいったの! あたしのことを本当に愛してたから!!」


そう叫ぶと、周囲からざわめきが聞こえて来た。


翔吾が死んだなんてみんな知らないからだ。


「なんだよ……それ……」


「あんたはどうなの?」


あたしはみんなに聞こえないような声でそう言った。


マキヤがビクッと体を震わせる。


「え……?」


「翔吾は命をかけてあたしを守ってくれた。それができなきゃ、翔吾以上の男だなんて認めない」


冷たい口調でそう言うと、マキヤは数歩後ずさりをした。


青ざめた表情であたしを見ている。


「俺は……」


震える足の間から黄色い液体がこぼれ出した。


アンモニアの匂いが鼻を刺激する。


あたしは一歩近づいて、マキヤの耳元に唇を寄せた。


「あたしのために、死ねる?」


マキヤが息を飲むのが聞こえて来た。


瞬間、叫び声を上げながら壁に向かって走り出した。


「ああああああああ!!!!」


マキヤは大きな雄たけびを上げながら壁に頭を打ちつけはじめたのだ。


何度も何度も繰り返し。


自分の出せる力全部を振り絞って。