その煙で本当に理性を失う事ができるんだろうか?


そんな不安を覚えた瞬間、あたしの中で何かが弾けるような音が聞こえて来た。


パチンッと目が覚めるような、何かが壊れるような音。


その音が響くたび、あたしは今まで生きて来た自分の人生が走馬灯のように蘇ってきていた。


幼稚園の運動会。


小学校の発表会。


中学校の修学旅行。


高校の入学式。


それらが頭の中でグニャグニャと曲がり、混ざり合い、記憶が抜け落ちていくような感覚に襲われた。


途端に、頭の中に翔吾の笑顔が浮かんできた。


初めてキスをした日の思いで。


待って、それを消さないで。


あたしの一番大切な思い出なんだから!


そう思っても、声に出す事が出来なかった。


翔吾の照れた笑顔がぐにゃりと曲がり……そしてあたしは、完全に自分を見失った。