やがて、仕切られた双方の部屋の中に白い煙が充満し始めた。


2人が鼻を塞ぎ必死でその煙から逃れようとしている。


しかし、逃げ道はどこにもない。


いくら鼻をふさいでいても、嫌でも煙を吸い込んでしまう。


しばらくすると2人は大きな声で叫び、目を血走らせ始めた。


宮田君のさっきまでの恐怖はどこかに消えてしまっているようだ。


口の端からヨダレを垂らし、目の前にいる山田君を見てガンガンと壁を殴りつけている。


「殺してやる!! さっさとこの壁をどかしやがれ!!」


宮田君の口からそんな言葉が出て来るなんて思っていなくて、あたしは目を丸くした。


山田君の方がまだ落ち着いていているように見える。


「宮田君は転入して来て間もないから、不安や不満がたまってたんだろうね」


どこからかそんな声が聞こえて来た。


そうなのかもしれない。


今まで平穏な学生生活を送り、部活でも成果を残して来た山田君に比べればその本性は恐ろしい物なのかもしれない……。