ノドの渇きを感じて、ふと目が覚めた。

「いつの間にか寝ちゃったんだ」


 モソモソと布団から這い出ると、部屋の電気は消されていた。

 ベッド横においてある時計を見ると、もうすぐ日付けが変わるところ。



 同室の人たちを起さないように、そっと病室を出た。


―――少し先にある給湯室でお水でも飲む事にしよう。


 非常灯だけの薄暗い廊下を注意深く進む。

 中に入って置かれていたコップを一つ借りて、お水を飲む。



 コクンと飲み込むと、のどの奥の何かに水が触れた。


―――これが“腫瘍”なんだ・・・。



 これがあるから、私は悲しい思いをしなくちゃいけない。




 もう枯れたと思っていた涙がじわじわとにじんでくる。