ドン、と体がぶつかった鈍い音。

 そのすぐ後に俺のバッグがドサリと落ちる。



「いってぇ」


 前を見ると、俺の胸ほどにしか身長がない小柄な少女がいた。

 大きな瞳を目いっぱい開いて、驚いた表情。



―――これって、よそ見してた俺が悪いよなぁ。

「ごめん。
 ケガはない?」

 声をかけると、少女は無言で首を横に振る。


 そして俺のバッグを拾い、ついたホコリをはらい始めた。


 昇降口が近いこの廊下は、風が少し吹き込んだだけでうっすらとホコリが溜まる。

 俺の黒のスポーツバッグには白い汚れが目立っていて。



 少女は小さな手で一生懸命払い続ける。


 何度も丁寧にはたいて、すっかり綺麗になったカバンを差し出してきた。

 やっぱり無言で。





「あ、ありがと」

 俺が受け取っても、ただうなずくだけ。