彼女は声を失った事で、声以外の事も色々と諦めてきたんだ。


 それはきっと俺なんかじゃ想像も付かないくらい、苦しかったと思う。




 そう思うと、胸が痛くて、目の奥がジンと熱くなる。





 少しでも苦しみを軽くしてあげたい。

 俺が彼女を支えてあげたい。






「・・・って、何考えてんだよ、俺」


 こんな事をチラリとでも考えた自分に驚いた。


 あの子を見ているとペースが狂う。


「はぁ。
 訳、わかんねぇ」



 それよりもっと驚いたのは、そんな事を考える俺を少しも不快に感じていない自分に気が付いたことだった。