花束が大きいのと、彼女が小さいのとで、姿が埋もれて俺からは見えなかった。


―――かろうじて足しか見えていないのに、よくあの子だと分かったなぁ。

 感心していると、小山が彼女に向かって手を伸ばす。


「持ってあげるね」

 そう声をかけて、彼女の腕から花束を取り上げた。



 花の影から現れたのは、額に少し汗をかいたあの子。

 メモを取り出して、書いたものを差し出した。


“お花ってこんなに重いとは思わなかった。
 腕が痛くて困ってたんだ。
 ありがとう、圭ちゃん”

 
「チカちゃん、小さいからなぁ」

 男の小山は軽々と花束を抱え、くすくすと笑う。


“もう!!
 小さいは余計だよ。
 か弱いって言ってよね”

 ぷぅっと頬を大きく膨らませてすねる彼女。


 その様子が微笑ましくて、俺はクスリと笑ってしまった。




 頬をパンパンに膨らませたままの彼女が俺の存在に気付いてびっくり。

 あわてて顔を戻して、ペコリと頭を下げた。


 そしてなぜか、小山の腕をバンバン叩き始める。