アキ君は窓辺に立ったまま動かない私を見て、短く息を吐いた。


「改めてイギリスに行ったら、“もうここにはいない”って言われるし。
 ずっと探していたんだぞ」

 私から少しも目を逸らすことなく、アキ君は一歩、一歩、ゆっくりと近づいてくる。


 私はびっくりしてしまって、彼を見ているだけ。

―――探していた?
  

 2年も音信不通だった元彼女に、何の用事があるというのだろう。

 
―――もしかして…。
   酷い別れ方をしたから、仕返しをしたかったとか?!


 まさかとは思うが、真っ白になった頭ではまともな考えが浮かばない。

 頭が混乱してしまって、今にも倒れそうだ。


―――どうして私を探していたの?


 訊きたいことはたくさんあるのに。

 ノドがカラカラに渇いてしまって、声が出せない。


 ふと気がついた時には、すぐ目の前にアキ君がいた。