「チカちゃん。
 本当にいいんだね?」


 私はきちんと『はい』って言ったのに。

 どうしたことか、トオルさんは表情を曇らせて訊き返してきた。


―――おかしなトオルさん。
   緊張してるのかな?

 心の中でクスッと微笑み、改めて笑顔になる私。

「もちろんだよ」


 だけど。

 にっこりと笑う私を見て、トオルさんは寂しそうにため息をついた。

「…それなら、どうして泣くの?」


「え?」

 私はあわてて空いている右手をほっぺに当てる。

 言われたとおり、指先には濡れた感覚が。


「あれ?
 どうしたんだろう」

 次から次へと涙が溢れてくる。