「…でも、俺が選ばれなかった時は山下さんを1発殴らせてください。
 そのまま引き下がるのは、あまりに悔しいので」

 俺が本音を漏らすと、彼は目を細めて笑う。


「ははっ、いいですよ。
 …何発殴られてもいいから、彼女を手に入れたいな」

 天井を仰ぎ見ながら漏らした彼のセリフは偽りのない本心だろう。


「そうですね」

 俺も、同じように思う。


 チカの彼氏として付き合った俺。

 今、チカのそばにいる山下さん。


 チカはどちらを選ぶのだろうか。



 それからは山下さんに人工声帯の説明をしてもらった。

 詳しく聞けば聞くほど、その技術のすばらしさに驚く。

 そして彼も俺と同じように、チカのために時間と苦労を重ねてきたのだ。


 だけど、チカのことは絶対に譲れない。


 5日後。


 俺を待ち受けるものはチカと一緒に歩む未来か。

 それとも…。