―――どうして、チカが山下さんと!?


 彼には彼女がいるはずなのに。

 ずっと好きだったと言う彼女が…。


―――『ずっと好きだった』?!


 イヤな予感がする。

 額にはいつの間にか冷や汗が浮かんでいた。


―――山下さんが好きだった人って…、まさかっ!!

 ゴクリ、と息を飲んで正面に座っている人物を見る。


 彼は言いづらそうに、ゆっくりと口を開いた。

「あなたが思っているとおりですよ。
 俺が好きだった人と言うのは、チカちゃんです」


「そ…んな…!?」

 俺の口から乾いた声が漏れる。


 同時に、数日前の夢が脳裏でスパークする。


 結婚式場となった教会。

 ウェディングドレスに身を包んだチカ。

 
 その彼女の隣にいたのは、この人ではなかったか?

 チカの口から出た名前は『トオル』ではなかったか?