「なるほどね」

「どうかしました?」

「チカちゃん、あのテロのあった日からその病院にしばらく通っていたんですよ。
 なんでも、被害にあった日本の方のお世話をするんだって」

「ああ。
 それは俺のことですね」

「勉強やアルバイトで疲れているのに、病院から帰ってくるといい顔をしているんです。
 その日どんな話をしたのか報告してくれるんですけど。
 チカちゃん、すごく嬉しそうで。
 『まるで恋人に会いに行ってるみたいね』って少しからかったら、“そうかも”と笑ったんです」


 ふふっと笑う上田さん。

 
「チカちゃんが留学してきてからずっと一緒に暮らしてきましたけど。
 こんなにいい笑顔を見せてくれたのは初めてでした。
 もちろん、過去にそんな理由があったのなら桜井さんに会えた事を単純に喜んでいたとは思えません。
 ですが、彼女に笑顔を取り戻してくれたのはあなたのおかげだったんですね」

 上田さんがにこりと目を細める。

「分かりました。
 あなた事はチカちゃんには知らせません。
 ・・・だから、約束してください。
 チカちゃんの笑顔をこの先も守るって」

「もちろんです。
 彼女を幸せにするのは、俺にしか出来ない役目ですから」


 そして、俺を幸せに出来るのはチカしかいないんだ。