「おっ、晃。
 帰ってたんだな」

 高そうなスーツを着こなした叔父さんが現れた。


 どことなく俺と似ているその人に向って、俺は頭を深く下げる。

「色々ご心配をおかけしました」

「いや、元気ならばそれで十分だ」

 ネクタイを緩めながら、叔父さんが嬉しそうに言う。

 
「帰国したばかりで、晃も疲れているだろう。
 食事が終わったら、早めに休むといい」

「そうね。
 すぐに用意するわ」

 二人はリビングから出て行った。




 叔父さんも叔母さんも必要なこと以外は言わないし、尋ねてこない。


 2人の表情から、自分がとても大事にされていることはよく分かる。

 なのに、よそよそしさを感じる。


―――俺がイギリスに行ったことに、触れられたくないのか?


 俺が“何か”を思い出すことが、そんなにまずいことなのだろうか・・・。



―――俺はいったい、何をしにイギリスへ行ったんだ?


 そのことが気になって、せっかく用意してくれたご馳走の味がよく分からなかった。