「入院は明日からなの。
 今日は家でゆっくりしなさいね。
 車はこっちよ」

 そう言ってつれてこられた空港の駐車場に用意されていたのは、運転手つきの高級車。

 テレビの中で、政治家やどこかの大社長が乗っているのと同じ。


「晃君、早く乗って」

「は、はい」

 戸惑う俺の前で、運転手が後部座席を開けてくれた。


 驚きを隠せないまま車に揺られていると、更に驚くことになる。


 ここが自宅だと言われたものは、もはや家と呼ぶようなかわいらしいものじゃなかった。

 城のように大きくそびえ立っている。

 あまりに立派で、門の前で足が動かなくなってしまった。



―――俺、本当にホテルグループの跡取りだったんだ。


 イギリスで『大きなホテルの次期社長で、日本ではある意味有名人だ』と大野さんに言われた。 

 いまいち信じてなかったけど、これで納得。


―――そうだよな。
   大野さんはウソをつくような人じゃないよ。 


 だから、彼女が言ったとおり、俺達は本当に面識がなかったんだ。


 そのことに、今更ながらすごくがっかりする。