私とお兄ちゃんはアキ君がいる病室に戻ってきた。

 ノックして扉を開けると、彼はさっきと同じように窓際に立っている。


「失礼します」

 お兄ちゃんが声をかけて中に入る。

 私も軽く頭を下げてから後に続く。


 ぼんやりと景色を見ていたアキ君がこっちに歩いてきた。

 聞いていた通り、大きなケガはしていないみたい。

 足取りはしっかりしている。




「桜井さん。
 彼女が協力してくださるそうですよ」

 お兄ちゃんがそう言うと、アキ君はほっと息を吐く。

「突然変なお願いをして、申し訳ありませんでした」

 丁寧な口調で、丁寧に頭を下げるアキ君。



 こんなアキ君を初めて見た私はちょっとびっくり。

―――知らない人みたい。
   仕事中はこんな感じなのかな?