今でもあの選択が正しかったという自信はない。

 だけど、私には別れしか選べなかった。


 何も言わず。

 連絡先も告げずに消えた私を、アキ君はどう思ったんだろう。


―――イギリスに来たのは、私を探しに?


 すぐにその考えを否定する。

―――追いかけてくるはずなんて、ないよね。
   偶然だよ、きっと。







“私の役目はこれで終わり?”

「うん。
 ありがとう、助かった」

 上着のポケットに手帳をしまったお兄ちゃんがにっこり笑う。

「桜井さんに挨拶してくる。
 チカちゃんは・・・」

“ここで待ってる。
 中には入れないよ”


「そっか、分かった」

 お兄ちゃんは小さくうなずいて、病室へ入っていった。



―――私には、アキ君と顔を合わせる資格なんて、ないもん。

 一人残された廊下で、そっとため息をついた。