そこは個室らしく、窓際に1人の男の人が立っていた。

 私の足音に気付いて、その人がゆっくりと振り向く。


―――あっ・・・。

 とたんに私の心臓が大きく跳ね上がった。


 逆光になっていてその人の顔がはっきりと見えないけど。

 このシルエットは見覚えがある。


 すらりとした長身。

 細身だけど、男らしい肩幅。

 バランスのいいスタイル。

 

 間違えようがない。

 忘れようがない。


 日本を出てから、何度この人の夢を見たことだろう。

 この人を想って、何度涙を流したことだろう。


 会いたくて、会いたくて。


 だけど、もう二度と会えない人。



 会わないと決めた人。



 その人が今、私の目の前に立っている。


―――どうして!?



“アキ君・・・”


 私の震える唇が、声にならない声で彼の名前を呼んだ。