「いつも、文学全集とか読んでそうだ」

 一文字、一文字、丁寧に目で追う姿が想像付く。


「で、その本は百科事典並みに大きくて重いから。
 棚に戻すのにふらふらしちゃって」

 小さくて華奢なあの子は、そんなイメージ。


「しかも、戻しきる前に腕がしびれて。
 結局しまえなくって、床に落としたりするんだろうなぁ」


 実際にありえそうな状況。


 ぷっと、吹き出す。


 微笑ましい光景に自然と笑みが漏れる。










「・・・って、何であの子のこと、考えてんだよ?」




 自分が身内以外の女性の事を思い浮かべるなんて、この5年間一度もなかったのに。



―――そりゃ、ひどい事言って傷つけたり、話せない人に初めて会ったから、印象には残っているけど。





 それにしたって、あの子を思い浮かべて笑うって何事だ?!



 自分の中の変化に、俺は戸惑いを隠せなかった。