「俺、何も聞かされてなくて・・・」

「そう。
 いったい、どうしたのかしらねぇ」


 俺は大きなため息を付く。

―――『留学する』なんて、簡単なことじゃない。
   こんな大事なことをどうして俺に内緒にしていたんだ? 



 黙ってしまった俺に、叔母さんが微笑みかける。

「チカちゃんに会えなかったのなら、食事はまだなんでしょ?
 すぐに用意するわ」

「いや、いらない。
 部屋で休むよ」

 俺はがっくりと肩を落とし、叔母さんの横を通り過ぎる。



 叔母さんの顔がどこかほっとした表情になっていたことに、うつむいていた俺は気が付かなかった。