私は何度か深呼吸を繰り返し、伏せていた顔をゆっくりと上げた。 

“お話はよく分かりました”


 もう1度深呼吸をして、まっすぐに叔母様を見つめ返す。

“彼と別れるのは身を切られるくらいつらいですが、私のワガママでそちらの会社を振り回すわけにはいきませんから。
 ・・・アキ君とはもう会いません”

 震える指先で叔母様に告げる。


 何のとりえもない私が巨大グループの跡取りであるアキ君と一緒にいるなんて、きっと許されないことだったのだ。


 もっと早くに身を引けばアキ君は苦しまなくてすんだのに・・・。


 そう思うと、やりきれない。



 
“アキ君はこの件でずっと悩んでいたはず。
 でも、これでそんな日々もおしまいです。
 彼を解放してあげられると思えば、私も救われます”

 こわばった顔で笑顔を作った。


 私の隣にアキ君がいなくなることよりも。

 私の存在がアキ君を苦しめていることのほうが、何倍もつらい。


 



 下ろした手をひざの上できゅっと握った。