コーヒーを一口飲んだ叔母様は、これまでの沈黙がウソのように話し出す。

 言葉を止めてしまったらためらってしまう、とでも言うかのように。


「うちのホテルは世界進出もしていて。
 時折、本社と支社のトップとお得意様を集めてパーティがあるわ。
 既婚者はパートナーと出席するのが欧米では当然のルールなの」


 叔母様はちらりと私を見る。

「チカちゃんが晃君と結婚したら、そういった場であなたもお客様をおもてなしする立場になるのだけど。
・・・チカちゃんには向かないと思うの。
 あなた自身も、そこにいるのがつらいでしょうし」


 言葉を選びながら告げてくる。


 私に気を遣ってくれているのだ。

 一方的に『別れろ』と言っておきながら、本当は優しい人。




 叔母様は話を続ける。
 
「現実的なことを考えて、順二さんはあなた以外の女性とのお見合いを晃君に勧めてるわ。
 でもね。
 晃君は“あなたと結婚できないなら、社長の立場も桜井家も捨てる!”とまで言ってるのよ」


 





 叔母様の言葉にハッと息を飲む。

 ここで私は数日前の出来事を思い出した。