―――声が出ないから、チカとの結婚を認めないって言うのか?


 そんな理由で?

 それだけの理由で?





 俺は一つ息を吸って、淡々と言った。

「だったら俺、社長になれなくていい」



 ギョッと目をむいて、2人があわてる。

「あ、晃!
 お前、何言ってんだ!?」

「私たちは晃君が跡を継いでくれることが楽しみで、今まで頑張ってきたのよ!
 晃君だって、快く引きくけてくれたじゃない?」


「確かに、跡を継ぐ気があるって言ったよ。
 でもそれは、チカと別れるって意味じゃない。
 俺はチカ以外の人とは結婚しないからっ!!」

 テーブルにバンッ、と手をついて立ち上がる。


「晃っ!!」

「晃君っ!!」 



 2人が大声で呼び止めてくる。


 それを無視してリビングを出て行った。