数分後、公園内の歩道の向こうから走ってくる足音。


 うずくまっていた姿勢から顔を上げると、アキ君が呼んだ。

「チカッ!」


 私は立ち上がって、電話ボックスの扉をドンドンとたたく。

 アキ君はそこにいた野良犬をどうにか追い払って、扉をガバッと引いた。



―――アキ君!!


 私が抱きつくと、それ以上の力で抱きしめられる。

「よかった、無事で・・・」

 アキ君が大きなため息と一緒に言う。


“心配かけてごめんね。 
 来てくれてありがとうね”


 何度も『ごめんね』と『ありがとう』を繰り返す。





“ホントに、ホントに、ありがとうね”

 アキ君の顔を見たら気が緩んで、涙がドンドン出てくる。



「そんなに泣いたら、目が真っ赤になって家の人が驚くよ」


 私のほっぺを指でぬぐいながら、彼が笑った。