「俺、予備校に行くから先に帰るな。
 桜井たちも早く帰れよ」

「ああ」

 手を振って、去っていく小山の背中を見送った。





 ヒヤリとした風が吹く。

「帰ろうか」

 何気ないふりを装って、俺は右手を差し出した。


 本当はちょっと・・・、いや、かなりドキドキしてる。

 チカちゃんはさっと顔を赤くして、じっと俺の手を見ている。



 そして、ゆっくり、ゆっくりと自分の左手を上げてそっと俺の手に重ねてきた。


 その指先をやんわりと包んで、俺は歩き出す。

 すぐ横にいる彼女の存在がかわいくて、嬉しくて。



 自然に口元が緩んでいた。