俺は彼女に微笑みかける。

「あのさ。
 声が出ないことは動かしようのない事実だけど。
 俺はそれも含めてチカちゃんが好きなんだよ。
 初めて逢った時から、君は話せなかった。
 それでも、俺はチカちゃんに惹かれた」


 置いた手にぐっと力を込めると、彼女が顔を上げる。

 俺は彼女の瞳をまっすぐ見つめ、ありったけの想いを込めてささやいた。


「好きだよ。
 君が障害者でも、犯罪者でも、俺はチカちゃんが好きなんだよ」


 彼女の大きな瞳にブワッと涙が浮かんだ。

 あふれて止まらない涙を小さな手でぬぐいながら、メモの上でペンを動かす。


“あきらめないでよかった。
 先輩が大好きです”



 涙でぐしゃぐしゃになりながら、笑顔を俺に向けてくれた。