「怖かったよね?
 ごめん。
 本当にごめん」


 俺は彼女の震えが止まるまで、肩に手を置いていた。






 しばらくすると、ようやく彼女の顔のこわばりがとけてゆく。

 それを見て、俺は手を下ろした。


“先輩は優しい人ですね”

「あ、いや。
 誰にでも優しいわけじゃないし。
 その・・・。
 君にだけだよ、俺が優しいのは」

 
 俺の言葉に不思議そうな顔で、首をかしげる彼女。

 その瞳にスッと影が浮かぶ。


“私が、『話すことの出来ないかわいそうな子』だからですか?” 


 ゆっくりと瞬きを繰り返す彼女の瞳に、うっすらと涙が浮かんだ。