声にできない“アイシテル”

「急にどうしたんだよ、チカちゃん」

 ゴミを拾い終えた小山が彼女を見る。


 ようやく我に返った大野さんは、まだ少し顔を赤くしたままメモに何かを書いている。


“だって、桜井先輩が急に『チカちゃん』なんて言うから。
 いつもは『大野さん』なのに。
 それでびっくりして”



 そういう理由だったのか。


「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ。
 小山がいつもそう言ってるから、俺もつられたというか・・・」


「俺のせいだって言うのかよ」

 じろりと俺をにらむ小山。


「お前が一日中ずっとチカちゃんの話をするからだろっ!」

 俺もにらみ返す。


 その横で今度は耳まで赤くする彼女。


「あっ、ごめん。
 つい・・・」

 俺の顔も赤くなる。



 いつもは周りから無表情だと言われている俺なのに。

 この子といると、ほんとペースが狂うんだよなぁ。




 そんな俺を、小山はなんだか嬉しそうに見ていた。