私は今、屋上の前の踊り場にいる。
屋上は鍵が開いてないからね。
そろそろあいつが来る頃なんだけどなぁ。
私は右手に救急箱を持っている。
保健室には頼りたくない、って子供なのか、あいつは。

「おーい、猫田ー!
出てこーい!!」

下の4階をしもDが走っていく。
無視だ、無視。
………そういえば、もう、4限目だったっけか。
タンタン、と一定の音が近付いてくる。
…………来たかな。

「やっほー、槙田。」
「何がやっほー、だ。
ざけんな、クソが。」
「手当てしてやってるの誰だと思ってんのー?
腕出せやぼけー。」
「…………チッ。」

槙田 蒼一郎。
私の幼馴染で、ガチ目のヤンキー。
朝に喧嘩しては、私に手当てをしてもらってる。
ガーゼに消毒液をつけて、傷口にポムポムと当てていく。
別のガーゼを当てて、包帯でグルグル巻きにしていく。

「ん、サンキュ。」

そう言って、階段を駆け下りていった。
下から、コラァ!!!、というしもDの声が聞こえた。
何やってんだ、あいつ。
んー、と私はのびをした。
私もバレないうちに戻ろうかな。
いや、裏庭に行こっかな。
救急箱に包帯を入れて鍵を閉めた。
角っこに置いておいて、私は手すりに手を掛けた。
踊り場から手すりを滑って行って、一階に向かう。
今、顔ヤバイことになってるだろうなー。
途中で、しもDに連れて行かれている、槙田の背中が見えた。
それが可笑しくって、笑いを堪えつつ、残り2階分を滑って行った。