朝の5時。
私(松永あい)は自分の家の鍵を開けて、ドアノブをそっと引く。
「…た、ただいまぁ〜」
シン、とした廊下。明かりはひとつもついてない。奥のリビングのドアから薄暗い空の色が見えるだけ。
極力音を立てないように寝室まで向かい、ダブルベッドの上に存在するその背中を確認する。
よ、よかった。
寝てるみたい。
そりゃそうだよね。
よし、私もこのまま隣で寝てやろう。
「あい、おかえり、」
静かな寝室に響いた、彼の声。
ゾクリ、と鳥肌が立つのが分かった。
「っ…こここ、康平くん…起きてたんだ。あ、あははは」
動揺を隠し切れない私はどもりながら笑う。