「タイプの子はいたか?笑」


久しぶりに足を踏み入れたスタジオの匂いにほっとしながら、直生の隣に腰を降ろした。



「・・・あ、お疲れさまです。笑」

「もしかして、例のMVの件?どうした?」

「あー・・・うーん・・・笑
最初から、こんなくだらないことに拘っても仕方ないのかなぁとは分かってるんですけど・・・」



照れたように、しかし真剣な眼差しで言葉を選ぶ。



「楽曲のイメージに合う女性を探してるんです。
俺、今回の曲を聴いたときに感じた、鮮烈なイメージがあって。」

「へぇ。イメージか・・・
ちなみに、どんなイメージを受けたの?」

「恥ずかしいんですけど。まさに、“流れ星”みたいな。」




夜空を駆ける流れ星のように。
一瞬で、人々の脳裏にその姿を焼き付ける。

人生において消えない記憶となり。その煌めきに何度でも胸を焦がす。

これしかない、と。
何としてでもこの手に入れたいと、身体中が衝き動かされる。

全ての偶然を、必然に変えるほどの引力。





「・・・すっごい、まとまりのない感じなんですけど。漠然としすぎてますかね・・・
今回の楽曲のイメージと、今の自分らの想いを重ねたら、こんな感じになるのかなと思ってまして。」


「・・・へぇ。」




正直、驚いていた。
いや、もはや感動してたのかもしれない。

直生がこんな詞的な観点を持っていたことには、もちろん。笑




直生の選んだ言葉たちは、どれもはぐれることなく。
俺の中で真っ直ぐと今回の曲へたどり着いた。




これは、このイメージをうまく映像に載せられれば。

期待を超えて、多くの人の心を動かす。

とんでもないものができるのではないか。









「制作会議で、俺ら以外に一人女性を出そうということになりまして。出番も少ないし、メンバーとの絡みがあるかも未定なんですが。
うまく、その女性に今のイメージをかぶせられらたら、おもしろいんじゃないかなと思ったんです。」

「・・・いや、それかなりおもしろいんじゃない?」


直生は、一瞬驚いた顔で、すぐに子供のようにはにかんだ。




「ありがとうございます・・・
けど、偉そうなこと言ったものの、なっかなかこのイメージに合う女性を見つけられなくて。笑
綺麗な人は沢山いるのに、誰もにとって“流れ星”のイメージになれるのかなと思うと、違う気がするんすよね。」



こういうのって、見れば見る程分からなくなりますよね~と笑いながら、女優たちの宣材写真に目を落とす直生の隣で。







俺は、たった一人を思い浮かべていた。


恐らく、今日の直生の言葉をほとんど相違なく体現する。


あの人を。









今回の楽曲が、planetの、earthの今年の勝敗を決めるだろう。

メンバー一人一人の、人生を決めることにもなるかもしれない。





俺だって、この曲は外せない。

全員、違う場所で同じものを守る同士だ。









「直生、明日の夜空いてるか?
一つだけ、心あたりがある。お前の目で見て、決めて。」








翌日、流れ星の煌めきを見つけた直生は。


「素人」の出演を懸念するスタッフたちを説得し。
もしもの際は、自分が責任を取ると頭を下げ続け。




とうとう一人で、全員を納得させた。