こんなに、彼が酔ってるのを。
初めて見たと思った。







チ「航さーん!こんばんはー!」


ドアを開ければ、まるで少し大きな子供。
謎に威勢のいいハイタッチに応じると。

にこにこと、笑いの止まらない顔で乱暴に靴を脱ぎ捨てて。


チ「あー、あちぃ!走ったから!」


コンビニ袋を振り回しながら、スタスタと部屋に上がり込み。
豪快にTシャツを脱ぎ捨てる。


投げ捨てられたそれを拾って顔を上げると。

よく鍛えられた背中は、
勢いよくソファに倒れ込んで消えた。






航「チョコ、水飲む?」

チ「うん!あっ、コーラある?コーラがいいや。」



子供か、と見下ろしたら。

嬉しそうに、いいじゃん!と笑った。







氷をたくさん入れたグラスを渡すと。

息もつかせぬ、一気飲み。



チ「ごめん、こんな遅くに!寝てた?」


気持ちよく空になったグラスを差し出されて。



航「いや。珍しいな、チョコがそんな酔うって。」


もう一杯ついでこようか、と迷う。





チ「嵐と飲んでたんだ。盛り上がりすぎたね!」

航「こんな時間まで?がんばったな。笑」

チ 「だって、航さん明日オフじゃん。」

航「・・・俺?は?」



ぱたん、とまた横に倒れて。
既に目を閉じてる。



航「なんで?俺の明日のオフが関係あんの?笑」


酔ってんな、と思いながらも。

返事をしない横顔を、穏やかな気持ちで見つめた。




航「寝る?なんか着替え持って来るか?」

チ「んー・・・いい、脱ぐから。」




息が荒いのを見て。

ペットボトルの水を取りに、キッチンに戻ると。




チ「分かったよ。」

航「何が?」


今のチョコは、蓋を開けるのにさえもワーワー言いそうだったから。

キュッと一回回してから、テーブルに置いた。




チ「あの人。」

航「は?」

チ「あの人、いま沖縄にいるって。」






一瞬。

あの人が誰なのか、分からなかった。


あまりにもあっさり。

俺の探し続けてたものを、口にしたから。










航「・・・まじで?まじで、言ってんの?酔ってんだろ?」

チ「いや、まじで。あの人の友達と、飲んでたんだ。嵐連れてったら、けっこーすぐ教えてくれたよ。笑」