チョコが、耳から携帯を離した。
表情が変わらなすぎて、どうだったのかさっぱり分からない。
だけど、多分。
普通に考えてだめか・・・もう、4年近く前のこと。
チ「留守電だった。この収録終わったら、またかけてみるよ。」
航「え?つながった?!まじで?」
チ「うん。
しかも、自分の声で留守電メッセージ登録してた。なかなかなやつ。笑」
やっぱ個性的、と笑いながら。
チョコは通り過ぎるスタッフに、会釈する。
航「・・・ありがとう。まじで、ありがとう。」
正直、このラインが外れたら。
もう、持ちネタがない。
チ「電話しただけじゃん。
話ってそれだけ?俺まだアンケート終わってないんだよ。」
航さん、この喉飴あげるよ。
安かったから。
チョコの態度が、今の借りは今朝の借りと同等の軽さかと錯覚させる。
“人の気持ちを分かりすぎる”
航「あともう一つあって。
誰かペット預かってくれるような知り合い、いねぇかな?」
チ「あー、レオンか。今どうしてんの?」
航「基本、ペットホテル。帰れる日は連れて帰ってんだけど、なんか可哀想でさ。」
チ「うちはなぁ。ペット大丈夫なマンションだけど、ちょっと聞いてみないと。
あれ、理沙は?理沙のとこも大丈夫でしょ?」
やっぱ、理沙子か。
思いつかなかったわけじゃない、けど。
こんな状況で、前の女と飼ってた犬の世話させるっていうのも。
走ってきたスタッフが、ドアの前の俺らに軽く頷いてから。
「お願いしまーす!」とドアを開けた。
チ「理沙は、そんな細かいこと気にしないから大丈夫だよ。
あーあ、俺またアンケート終わんなかった。笑」
他メンバーと、軽くフリを確認しながら歩いて行くチョコの背中を見ながら。
“うちはなぁ。ペット大丈夫なマンションだけど、ちょっと聞いてみないと。”
そう言えば、誰に何を聞くつもりだったんだろう、とぼんやり思った。