目を開けると

白黒のシマシマが、視界を覆っていた。




薄く漂うBVLGARIの香りと、日に焼けた胸元に。ああ、ここは彼の腕の中だ、と心得る。

・・・寝ちゃったんだ。いま、何時だろ?

僅かに体に力を入れると。
柔らかく私をくるんでいた腕に、キュッと力が入った。





「・・・起きた?」


いつもより少し低い、掠れ声。
と、同時に。ふわっと頭上に、彼の顎の感覚。


『寝てた・・・ね。』

「うん。寒くなかった?」


後頭部を包む手の平の温かさに、また目を閉じてしまいたくなる。


『全然。私どれくらい寝てた?今何時なのかな?』

「うーん、わりとすぐ、反応がなくなった。笑
今は・・・」


右手で私の頭を抱いたまま、左手で器用に床からiPhoneを拾いあげる。

少しくらい、離れても仕方ないのに。
少しも私を手放さない彼の仕草に、起き抜けの頭はゆるゆるとくすぐったい。



「・・・4:00だ。」


くすぐらないように、話せる?
一瞬、そう言ってみようかと思った。

陽斗くんの音色は。
初めて会った夜から、私の弱点をゆるゆるとくすぐるから。


だけど、そう言ったらきっと。
どんな笑顔を見せるのか、もう分かるから。
私は言葉を飲み込む。




『チョコ、かっこよかった~・・・。』

「あっは。笑
ほんとに?理沙、どこまで見てたの?」





前髪が、彼の呼吸で揺れる。
目を閉じて。彼の香りを吸い込んだ。


もう少しだけ、このまま。

寝てたいな。