礼儀正しい言葉遣いで頷いて。

携帯を下ろした要くんが、私を立たせようとしたのは。
愛しのジャクソンがやって来て、すぐの頃だった。



『えー、まだ全然飲んでないよー?』

「ごめん。ここ出たら、飲み直そう。」



キラキラ光を反射して弾ける、金色の泡。

うう・・・辛い。



『ここで待ってちゃだめ?』


眉を寄せる要くんに。


『ちゃんと、ここにいる。ここでちゃんと、飲んでるから。』


こんなくだらないことで必死に縋る私は。我ながらに、子供っぽい。


要くんは、ガラスの向こう。人がゆるゆると音楽に乗るフロアをじっと見て。
粘り強く、シャンパングラスから手を離さずに
立ち上がりもしない私も、見て。



「・・・分かった。じゃあ、絶対ここにいて。」


降参した。


「飲み終わっても、ここを出たくなっても。俺が戻ってくるまで、絶対ここを動かないで。」

『はーい♡』


小さく息を吐いて、困ったように微笑む。


扉の前に立っていた黒服に、私を指して何か言ってから。
やっと、要くんは出て行った。









どんだけ、心配性なのか。
要くんになって私を見たら、相当な赤ちゃんに映ってたりして。

けど、私も子供じゃないし。
正直、クラブのこういう場所も仕事柄何度も来てるし。

私は要くんが思うより、もう少し。
“大丈夫”なはずなんだけど。




まだ音を立てるジャクソンに、唇をつけると。

心地よくピリピリ弾けた。