もしかしたら、ここのクラブ一度来たことあるかもな。
暗くても、見覚えのある景色だと思った。

鳴り響く爆音を、要くんとすり抜けながら歩く。
日曜の夜を感じさせない人の量。
明らかに、業界のオーラを放つ人たちは、キラキラに華やかさを振りかざしていて。


少し歩けば、声をかけられる。
このフロアの奥にあるというVIPルームを目指す要くんは、なかなか前に進めずに。

半身で忙しなく寄ってくる“お友達”に挨拶をしながら、半身で私に気を配った。



「理沙、もっと。」


“寄って”の言葉の代わりに、私の腰に回す腕にぎゅっと力を入れる。

“お友達”やすれ違う人でさえ。
相手が男性で、一瞬でも好奇の目が私に光った時には。

すかさず爆音を潜り抜け、甘い注意を私の右耳に落とす。
耳朶に触る髭の感触が、口元の近さを教えて。
私は目がチカチカした。



・・・こんなに、あからさまに守られると。
照れ臭い、を一周回って、くすぐったくてたまらないんだけど。











うちのボーイくんたちよりも、ずっと体格のいい黒服が。
重厚な奥の扉の前で立っているのが見えた。

あ、やっぱり、ここ来たことある。


『あそこー?』


大きく要くんの耳に呼びかけると。
目を大きくして頷いてくれた。