♯直生side


腕時計を二度見する。
こんな時間まで、一人でここに?


心臓が締まるような感覚があって、思わず寝顔に見入っていると。
時折彼女の口は、金魚のようにパクパクした。


「・・・なに、それ。笑」


だいぶ気持ち良さそうだけれど。
時間が時間なだけに、起こして帰したほうがいい。
彼女の肩を揺すろうとして、その下敷きになっている資料に気づく。


ああ、企画会議の後だったのか。
何となく、彼女の上から資料を覗き込んで。




開かれたページの主に気づく。

“NAO”




俺はきっと

音をたてて赤面した。




期待した。
彼女が眠りにつくその瞬間に。

最後に瞼に残ったのが、俺だったなら。









音を立てた空調に気づき、羽織っていた薄いカーディガンを彼女の肩にかける。

あの夜の記憶がちっとも色褪せないのは。
初めてこの人を、綺麗だと思ったから。


静かな寝息をたてる頬に、触れたくなった。
盗みたくなった。


だけどもう、忘れてほしくない。










また震え始めた携帯を押さえて、会議室を後にする。


“あたしの自慢は直生さん”


どんなに揺さぶられて、どんなに胸がひりついたか。
きっと、覚えてもいないんだろうけど。

今もなお、止まないなんて。
想像もしてないだろうけど。



君に次に会えたら。

楽しませて、驚かせて、
君のことを、もう少し知りたい。

どうしたらまた笑うのかな。
眉毛を下げた。あの、ふにゃふにゃの笑顔で。










「直生さん!こういうときの電話にはすぐ出てください!」

「手が離せなかったの。」



マネージャーの開き待つ車のドアを潜って、現実に飛び込む。


君を知りたい。
俺はあの日から、そればかり考えてる。