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年が明け、水瀬が正式に本社勤務になって、夏に発売予定の自社ブランドアクセの名前も決まった。



『Carmina stellae』

日本語では星の歌、花火星、そんな意味。
折角お洒落な名前をつけたのに社内では、すっかり省略されて、

「櫻井、カステラの写真の見本届いたって連絡入ってたよ」

「ありがと」

カステラ、いかにも美味しそうな名前……それはさておき、電話番をしてくれていた同期にお礼をいうと、さっそくそれに目を通した。


星空に負けない煌めきと、花火のように誰もが美しいと思える一瞬の永遠を大切にがメインコンセプト。

今回は男女問わずに着けやすいように、シンプルなネックレスやリングが主となっているからこその名前。


それをいかにして、広告で売り込むか。
街中に貼られる広告にもCMにも男女ふたりを必ずおさめることにした。

のはいいのだけれど





「誰か、水瀬知りませんか?」

思いがけないミスを見つけて、フロアを見渡すも姿はない。

デスクに鞄が起きっぱなしになっているから、外には出てないと思うけれど


「水瀬なら、さっき客きてたよ」

「お客様?どのくらい前ですか」

「んー、もうすぐ30分たつかな」

「そうですか、分かりました」


つまりは、いつ終わるかわからないってことか。

あの男は、昔も次から次へと仕事を請け負っては成功していたけれど、今は限界ギリギリまで、もしかすると限界を超えたくらいに働いている気がする。


無理して倒れたら元も子もないのに、具合の悪いそぶりなんて絶対見せないと分かっているから、尚更。

とまあ、今はそれより大事なことがある。