【短編集】その玉手箱は食べれません



「いいですよ」と私が言うと、ミニスカートを履き、派手なメイクのせいで余計に顔だけが老けて見える彼女は「恥ずかしいよぉ~」と断りながらも彼氏に肩を抑えつけられると椅子に座った。


 私は老人が落としていった筆を使ってキャンパスに似顔絵を描いた。


 もちろん赤い色で挑戦した。頭の中の雑念を振り払い真っ白な状態で描いたのが良かったのか、老人の画風をコピーしたかのように出来上がりは完璧。


 似顔絵を見せるとカップルは感嘆の声を上げ、請求した金額よりも上乗せしてお金をくれた。私は年下のカップルに深々と頭を下げた。