「ひっ!」 店員の若い娘は短い悲鳴を上げ、おれはちくわを銜(くわ)えて堂々と店から出た。 正義感面した中年オヤジが後を追ってきたが、ちくわを口の端からダラリとぶら下げたおれを見ると追いかけるのをやめた。 おれはピンク色のネオンが点滅する如何わしい店が建ち並んだ通りを好んで闊歩した。 この街から離れられないのは自分が生まれ育った土地だからだろう。