【短編集】その玉手箱は食べれません



あれから何日経ったのかはっきり覚えていない。

僕は本当にうっかり屋さんだ。

人を殺さないと、なんとなく前回の犯罪を思い出せない。

困ったもんだ。

水たまりを見て記憶が戻りそうだったのに、邪魔する佐竹君が悪いんだけど。

アニメの見すぎで推理なんかしようとするからだ。

この大切な記憶もすぐに人を殺さないと忘れちゃうんだろうなと思うと悲しい。

「先生!佐竹君のことなにかわかりましたか?」
帰りのホームルームが終わった直後、ツインテールがお似合いの宮西さんというかわいらしい女の子が下から覗き込むように聞いてくる。

佐竹君の隣の席の生徒で二人が会話している場面を見たのは一度や二度じゃない。


「まだなにもわからないんだよ」

「そうなんですか……」
視線を落として心配そうな宮西さん。

「きっと見つかるよ」
ただし、生きてはいないけどね、と心の中で呟く。

「は、はい」

「先生や警察の人達もがんばって探してるから」

「はい」

「ところで、宮西さん」
お辞儀をして帰ろうとする宮西さんを僕は呼び止める。