【短編集】その玉手箱は食べれません



「なぁ、知ってるか。このエレベーターに乗ったら……最期らしいぞ」

 男が後頭部をおれ様に見せたまま馴れ馴れしく話しかけてくる。


「一ヶ月前にエレベーターに体を切断された男が這いつくばって追いかけてきて、どこかへ連れ去ってしまうらしい」

 おれ様は男の無礼な態度に構うことなく、無視をする。


「失った下半身を探しに夜な夜な“出る”らしいんだよ。そして自分の下半身がないことがわかるとエレベーターに乗っている奴から体を奪おうとするみたいだ」

 男は“出る”という部分だけ若干声を震わせて“幽霊”という荒唐無稽な存在をにおわせる。