【短編集】その玉手箱は食べれません



「おれ結婚というものに興味がないんだ」

 正直な気持ちを吐露したおれは額縁の入った箱に蓋を閉めて返した。


「そうなんだ」

 海の底のような静けさのあと、元カノは無表情のまま、ゆっくりと台所へ。


 元カノは箱と一緒に誕生日プレゼントとして持ってきたおれの好きなスイカをドン!とまな板の上に置いて、包丁を握った。


 ザクッ……ザクッ……とスイカを切りながら「あなたの頭を切るときもこんな感触なのかしら」と、元カノは言った。


 おれはゴクンと唾を飲み込んだ。その音は脅えている証として元カノに聞こえたかもしれない。