【短編集】その玉手箱は食べれません



 なにか上に着るものだろうと思って箱を開けると額縁だった。しかも洒落た絵が納まっているわけではなく、一枚の書類がこれ見よがしに貼り付いている。


「なんだ、これ?」

 と、おれが訊くと元カノはニッコリ微笑んで言った。


「見たことないの?婚姻届よ」


「あのなぁ~」

 婚姻届にはすでに元カノの記入するところと証人の欄まできっちり文字が埋めてあった。あとはおれが名前と判を押して区役所に出せば結婚成立。


「出すのはいつでもいいから部屋の目立つところに飾ってね」


 嫌だ……見るたびにおれは結婚という呪縛にとりつかれ、徐々に首を絞められていくなんて……嫌だ。