【短編集】その玉手箱は食べれません



「おれのことは忘れてくれ」

 おれは立ち上がろうとしたが、まだ薬の効き目が抜けてないのか頭が鉛のように重くてすぐに片膝をつけて座った。


 そのとき、コンクリートの破片が手に触れた。


「嫌よ、忘れられない」


「君のそのしつこいところが、もううんざりなんだ」


 付き合いはじめたころはかわいかった。おれがテレビを見ていると猫のように寄り添ってきて興味がないはずの野球中継でも付き添って一緒に見てくれた。


 しかし、それもおれの誕生日まで。


「ハイ、誕生日プレゼント」

 渡された白い箱は底が薄く、赤いリボンが斜めにかかっていた。