【短編集】その玉手箱は食べれません



「おれは遊園地でメリーゴーランドに乗ったことがない。左回りだからだ。外車の運転席、エスカレーターの立ち位置、陸上のトラック競技は左回りだから参加したことがない」


「変人ね。ということは右を選ぶということで理解していいのね?」


「その拳の中に希望でもあれば選んでやるよ」

 悪意のない嫌味を言ったつもりだが、もう一発パンチを食らうことを覚悟した。


「希望?残念ながら私の拳の中には絶望しかないわよ」


「だったら選べるわけないじゃないか」


「どうして?どうしてよ?」

 相手はヒステリー気味に尋ねる。