自画像を描くことに躊躇はなかった。 私は泣いている自分の顔を思い浮かべながら筆を動かす。 カラン、カランと面相筆が病室の床で軽やかにバウンドした。 「久し振りにこの筆が役に立ったかのう」 老人は面相筆を拾い上げて病室から出ていった。 ★ ★ ★