**-- Epilouge --**



あのノート……、
自分がエイズだと分かってから書き続けていただなんて、誰も知らなかったよ。


ビデオカメラに思い出を焼きつけていたことくらいしか、みんな知らなかったよ。


まさか最後の1冊だけ、俺たちに宛てた手紙が書かれたノートだけを三浦さんに渡していただなんて、葬式のときにやっと分かったくらいだったよ。


冷たくなった栞を病院から家へつれて帰るとき、栞の遺品の中には3冊しかノートがなかったじゃないかよ。


なんだよ、
もったいぶりやがって……。


栞がやるサプライズは、いつもあとになってから俺に届く。


病気を隠して初詣に行ったときもそう。


2回目にフラれたときも、余命のことは隠していたっけな。


そして、とどめはあのノート。


俺たちの名前ばっかり書きやがってさ、自分のことより俺たちの将来のことを延々心配したり励ましていた。


少しは自分の体のことも書けばいいのに、栞が残した文章は俺たちの名前で埋めつくされていた。