空を祈る紙ヒコーキ


 『音を楽しむ』そう書いて音楽と読むだろ? 楽しめるメンバーであれば必ず有意義なバンド活動になる。空はそう言った。理屈は分からないでもないけど丸め込まれてる感じもする。

「二人みたいに経験ないし、音楽の成績だって特別よかったわけじゃないし……」

 中学の時は音楽の成績より五教科の方を重視していた。そんな私にバンド活動なんて無理。……この時、バンドへの苦手意識以上に二人の大切な時間を邪魔する存在になりたくないと強く思った。

「私のせいで足ひっぱりたくない。二人はバンドやってたしそれなりに本気なんだよね」

 断り文句を聞いてもなお、空と愛大は私を誘うことを諦めなかった。

「俺らの前では思う存分歌っていい」

「短所を長所にできるのが音楽の楽しさだよ。一緒に楽しい高校生活にしよ、涼」

 そこまで言われたら断る言葉なんてもう頭に浮かばなかった。

 普通なら「しつこい!」とうんざりするところかもしれないけど私の場合はむしろ逆で、とても嬉しかった。何の取り柄もない私のことをこんなにも必要としてくれることが。熱心に誘ってくれることが。

 メンバーが足りないからだってのも分かっている。でもそれだったら他に経験のある人を誘えばいい。声をかければ一年の生徒にも軽音楽部に興味を持っている人がいるかもしれない。なのに私がいいと二人は言う。

 唯一得意だった勉学方面でも結果を残せずマイナス思考で性格の悪い女。そんな私なんかでも求めてくれる人がいる。しかも二人も。

 ここでなら私の知らなかったものが見つかる。そんな予感がした。